Art2007_08

img3d72eb57zik8zj.jpeg三遊亭円朝 / 幽霊画コレクション

全生庵へおいでませ

ピポ子が前々から見てみたかったものがあるの・・・それは三遊亭円朝コレクションの「幽霊画」よ!

千駄木にある"全生庵"というお寺で夏限定公開されていて、見逃すと次の夏まで見れないわ。この辺りは歴史的なお寺や家屋が戦災から免れ、今も時間を感じさせない佇まいを楽しむ事が出来るわ。

偶然この近くに住んでいる人生の師匠、ひとみさんにガイド役を買って出て頂いて、おいしい南仏料理を戴いた後出陣!展示室の中に入ると急に温度が下がった気が・・・。

いや〜しかし美人の幽霊というのは怖いわ。何故怖いのかと考えた結論・・・今は掛軸の中で「恨めしい・・・」と、か細い声を出していても、急に変貌して何かしでかすんではないか?という緊張感を持っているから。

最初から目をむき出して血を滴らせてる幽女は何をしたか、するか想像がつくしわかりやすいもの。まさに現実世界も同じね。穏やかに見えるあの人が陰でこんな事を・・・!?なんていう意外性が恐怖をかきたてるわ。

狭い展示室に飾られた数々の掛け軸は圧巻!オーソドックスなものから、だまし絵風に表現したもの、現代の広告につながるデザイン的なものと、レイアウトも凝ってるわ。

幽霊=怖いものという感覚で見てしまいがちだけど、その考えは一瞬にして吹き飛んじゃう。どの作品も、女性の「情念」「暖かさ」「ユーモア」が表現されてるの!

人間が人間である事の愛おしさを感じるというか・・・。さ、明日はピポ子お気に入りセレクションをピックアップさせてもらいまーーす!

img8d6fe9bbzikezj.jpeg幽霊画 / 掛け軸

幽女からの視線

念願の幽霊画・・時の経つのも忘れて見入ってしまうわ。

ピポ子が特に気になったのは菊池容斎作の「蚊帳の前に座る幽霊」行灯の中に紛れ込んだ蛍・・・そのうちの1匹が灯となってぼうっと照らし出した蚊帳の先には、女性の幽霊が・・・!行灯はやけにしっかり描かれていてタッチがとても現代的なの。

通常なら蚊帳の手前をしっかり描き、向こう側が淡く描かれて当然なのだけど、見事に逆になってるわ。現実世界ではおぼろげな彼女が、あやかしの世界で現実感を増すという趣向のようで面白いけど、何よりも彼女の目に惹かれたの。

誰かを待っている・・・でもそれは流れない時間の中。寂しいと言うよりも虚しさが増してゆく。その姿が何故か自分と重なり、見ているうちに辛くなってきちゃったわ。

近くで見ると行灯と幽霊の質感に違和感があるというのに、全体的に見ると完璧な融合!終わりのない女の悲しみを見事に表現しているのよ。

・・・でもそんな俗世的な感覚を超越しているのが、丸山応挙の「幽霊図」他の作品が墨の濃淡や別色の加筆でアクセントを出している中、彼はワントーンで勝負!袂に手を添えややうつむき加減の幽女は、今世の私達を「クスッ」と笑ってるように見えるわ。

気品に溢れた表情としなやかさ・・・何て美しいのかしら。決して太い線で描かれている訳ではないのに、その存在感の凄まじさは圧巻よ!"King of 幽霊画"ここにありだわ!!

絵は見る人の気持ちや状況によって解釈は変わるから、来年彼女たちに会った時また印象が変わっているんだろうなあ・・・楽しみ。

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2007 8
三遊亭円朝 / 幽霊画コレクション
幽霊画 / 掛け軸

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