Art 2008_12

imgbcff0a03zik2zj.jpegボブ・ロス

奇跡! 刷毛と絵の具の魔術師

皆さんはボブ・ロスをご存知?1983年から2004年まで「ボブの絵画教室(The Joy of Painting)」という長寿人気絵画番組に出演していた、アフロにお髭がトレードマークの油絵画家なのよ。

実はピポ子、最近までボブの事は知らなかったのだけど、彼の番組の映像を見せてもらって一目で虜になったわ。初めて見た回では、ボブは真っ黒に塗りつぶしたキャンバスにどんどん木を描いてゆき、ものの30分で恐ろしいほどの質感があって緻密な森を完成させたから度肝を抜かれたわよ!

何処から見ても写生したとしか思えない絵なのに、自分の想像力だけで、しかも構図も考えず描いちゃうから天才としか言い様が無い!!

真っ黒から始まった画面が生き生きとした森に変貌していく経過を見ていると、もしかして騙されているんじゃないかと思ってしまう位お見事。油絵ってオイルを付けて平筆でドーンと塗って上からどんどん描くのが主流だと思ってたけど、ボブは銀杏型の筆、刷毛の特性を活かし、大胆に塗り付け、暈し、画面に絵の具を押し付けていくの。土ひとつ描くにも"描く"のではなく"盛っている"ようで、彼の手法は独創的であると同時に効果的よ。

そして素晴らしいのは技術だけじゃないわ。彼のトークも最高なの!木の枝を描きながらボソボソと「税務署にお金を持って行かれる」とか「ほら、うまいでしょう」など茶目っ気たっぷりの発言には爆笑したわ。

吹き替えの石井隆夫さんの声は、本人よりちょっと高目の声だけどイメージにぴったりでなかなか良い感じなの。でも残念ながらボブは2005年に52歳という若さで天に招かれてしまい、その勇姿はDVDでしか見れなくなっちゃった・・・もし今も元気でいらしたら絵を習いたかったな。NHKさん、是非再放送をお願いします!是非に!

081204.jpg佐伯俊男
井上洋介
杉村篤

サイケとナンセンスの時代展

佐伯俊男氏、井上洋介氏、杉村篤氏の3人展が開催されていたわ。

一歩足を踏み入れるといつもとは違う異様な雰囲気が漂っていて、お香のような匂いが漂ってくるような錯覚を覚えたのよ。それもそのはず!展覧会のテーマが『サイケとナンセンスの時代展』なんですもの。普段から個性の強い作品を扱う画廊だけど、今回は又一段とアクが強い!佐伯氏は常にインクペンを用いて、妖しと人間の妖しい世界を描く方なんだけど、実に不気味さの中に滑稽さがあって良いわ。

今回はあまりエグイ作品がなかったのでちょっと安心。でも、ぬらりひょんを思わせる老人と女子学生がこたつに入っているという作品にはギョッとさせられたけどね。井上氏は肉感豊かな女性を描いているのだけど絵本作家さんらしい優しい色遣いで、この3人展の中では一番ほっとさせられる画風だったわ。

そして最後は杉村篤氏!クリムトを彷彿とさせる構図にコラージュされた写真がはめ込まれており、とてもサイケ!"幻想シリーズ"という作品から何点か展示されていたのだけど、石ノ森章太郎氏の初期の画風に近くポップだったわ。青や緑の色使いが"ザッツ70年代!"としか言い様の無い良い色なの。

杉村氏のご子息は全員ミュージシャンなのだけど、これだけ強烈な感性を持つ人が父親ならば当然かもしれないわね。ねっとりと絡みつく会場の空気を外の冷気で払いながら、たまにはペンで絵を描くのも良いな・・・と思うピポ子でありました。

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2008 12
ボブ・ロス / ボブの絵画教室
佐伯俊男,井上洋介,杉村篤 / 三人展

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