寺沢武一
「コブラ」
日本発近未来・・・
「週刊少年ジャンプ」で連載されていた名作は数あれど、その中でもかなり際立っていたのは寺沢武一氏の「コブラ」!
ピポ子が生まれて初めて"アメコミ"の質感に触れたのは彼の作品が初めてなの。日本人でありながらアメコミという言い方はおかしいかもしれないけど、寺沢氏の描き出す世界は完璧に日本人の感覚ではないので、異国の漫画を読んでいるような錯覚に襲われるわ。
登場するキャラクターの力強さ、美しさ、斬新さ・・どれをとっても息を呑むばかりで、どんなに時を経ても古くささが全く無いの。一度見たら虜・・とてつもないオリジナリティよ!
「コブラ」は、左手にサイコガンを持つ不死身の男コブラが相棒の美しいアーマロイド・レディと共に宇宙を飛び回るというストーリーなのだけど、敵対する海賊ギルドを始めコブラが愛した3人姉妹、一度しか出てこない登場人物に至るまでしっかりと描かれて個性満載。女性のコスチュームはかなりセクシーだけど、嫌らしさより格好良さが際立っているわ。
それにその"女性を美しく見せる構図"は超ウルトラ級よ。これだけの画力とセンスがあれば思い描く世界も思いのまま・・・驚異としか言いようがない!その上、寺沢氏は80年代初期からPCでの創作活動を開始し、92年には「タケル」で世界初フルCG漫画を発表したことでも有名なのだけど、常に時代の先を読む人だからこそこういった素晴らしい発想が出来るのかもしれないわ・・・。テレビアニメ版のオープニング、エンディングの楽曲も絵もあまりにも完成度が高く、今でも思わず口ずさんでしまうの。
多感な幼少維持代にこういった作品に触れられた事に本当に感謝!この作品を見る為に、当時高額だったビデオデッキを購入してくれた母にも感謝!成長した今、寺沢作品の音楽制作に携わっていた長岡氏とも出会えた事にも感謝!いや〜名作は色あせることなく語り継がれて行くのね。
三種の神器を持ちながらも更に努力を続ける寺沢氏・・彼の漫画道に妥協という言葉はない。これぞアーティスト!!日本人として誇りに思うばかりであります。
高橋葉介
「夜姫さま」
官能的筆紳士
「夜姫さま」!というホラー漫画の短編集。どのストーリーも”姫”が主人公なのよ。
彼の作品に出会ったのは恐らく高校生の頃だったかしら。
以前、漫画雑誌で彼の代表作である「夢幻紳士」という作品を一目見たのだけど、その躍動的な筆遣いに驚かされたわ!どこかレトロで懐かしい感じがしながらも、東洋でもなく西洋でもない、過去でも未来でもない独特な線と色、そして物語の背景・・・全てが斬新で他に類を見ない作風だったのよ。
愛読していた少女向けホラー雑誌でも、高橋氏の作品はいつも異彩を放っていたわ。彼も日野日出志先生同様、人間の恐ろしさや悲しさを表現していたから・・・。最近ネット上で高橋氏が2年前に発表した作品を読める事を知り、早速見てみたの。それが「夜姫さま」!
第一章の『鷹姫さま』は、鷹が人間に化けて自分を撃った人間と恋に落ち結婚するけど、鷹の仲間がやってきて彼女は人間を守るために戦ったのよ。あとには卵だけが残った・・・という展開。1枚に付き2コマのみ、しかも台詞が全く無く、姫と人間と鷹の仲間の表情だけで状況が瞬時に理解できるから素晴らしい!
その他にも『猫姫さま』という作品は絶品。見せ物小屋で働く猫の娘が人間の書生に恋をしてしまうのだけど、彼は見せ物小屋の生首が気になり持ち帰ってしまうの。生首は実は妖かしで書生を食らってしまうのだけど猫姫は果敢にも首と戦い、今度は首だけになってしまった書生を見せ物小屋に持ち帰るという恋愛成就!?のお話しなのよ。
とにかく高橋作品に登場する女性は全てどこか憂いがあって品があって官能的!毛筆で描かれた髪や丸みを帯びた体は味があるのよ。筆かすれの部分はぞくぞくするほど色っぽいわ。
今ではPC上で様々なソフトで絵を描くのが主流だけど、彼の筆遣いを見てしまうと直に紙に描く喜びが思い出されてならない。でも、いくら真似たとしてもこの線を出すのは一生掛かっても無理でしょう。紙全体から匂い立つような素晴らしいストーリーと筆遣いは健在!高橋先生、次回作も楽しみにしてます!
新猫種大図鑑
300頁の見ごたえ
沢山の猫と同居しているのだけど、その中に高齢の猫がいるのよね。最近名前を改名した、その名も"大御所"。元々野良出身なので推定年齢17~18歳なの。研歯も3本抜け落ち毛の色艶も失いつつあるのだけど、ストレスに感じないレベルの介護をしながらスローペースで一日一日を大切に生きているわ。そんな中、近所の図書館で「新猫種大図鑑」というゴージャスな本を見つけ早速借りてきたの。
300頁ある図鑑で見ごたえ充分。単純な猫種の紹介だけでなく、猫の歴史から、人間との関わりの歴史、体の詳細な構造や行動学と育て方、等々、豊富な写真や資料が読みやすく編集されてるわ。
興味深かったのが人間との関わりの歴史のコーナーで、1300年代の猫大虐殺期のお話。猫を悪魔の象徴とみなして、何か災いが起これば全て猫が元凶とされ虐待され、城の屋上から投げ捨てられたり、絞首刑されてる様子の当時の絵が痛々しい・・・。結局、猫大虐殺が原因で、ペストが流行してヨーロッパの人口は1/3に激減したそうよ。因果応報とはこの事ね。
他にも「魔猫と迷信」や「猫にまつわる民話とおとぎ話」など、文学の中に登場する猫達の不思議なお話がダイジェストで多数収録されていて面白いわ。それと「美術に登場する猫」と銘打った近代のグッズから大昔のアイテムが紹介されていて、これは是非欲しいという一品もあったの。
猫の体に関する構造学もしっかり記載されていて、特に内蔵の詳細な図解は勉強になったわ。猫の体はやはり神秘的・・・これだけ長い間生き続けている歴史があるわね。それからは猫の体を触る時に、ここがあばらでここが心臓で、なんて探っちゃう癖がついちゃったわよ。生き物を飼う以上、なるべく多くの知識はつけておかなくちゃいけないわね。
丁度一年前、まだヤングなママ猫が循環器系の病で亡くなってしまったのだけど、その分大御所にはできるだけ長生きしてもらって化け猫の域まで達して欲しいわ!!ニャッニャーン!