EPICA
Design Your Universe
赤毛の女性ヴォーカル、シモーネ・シモンズ率いるオランダ母体のシンフォニック・メタルバンドEPICAの新譜「Design Your Universe」が届いたわ。早速Black Tower Studioで爆音試聴会よ!
プロデュース&エンジニアはKamelotと同じサーシャ・パース。総評を先に言ってしまうけど凄いわね。しっかりとお金をかけるところはかけているし、安易さをまったく感じないのよ。これは特に欧州のアーティストに共通しているのだけど、言語は英語でも楽曲自体はとてもそれぞれの文化を色濃く出して”どうだ!”って感じで挑んでるのよね。
市場的にも米を意識しない戦略が背景になるから、ヒットメイキング的なアレンジではなくて、哲学的・文学的に歌詞にそくした構成になってるの。シンフォニック系は曲よりも歌詞の世界観を表現すると劇的な展開系になるって事ね・・・だから聴いていて無理がないのよ。表面的なバンドはただギャーギャー、ゴリゴリとゴシック気取りで中身がないから見た目に頼るしかないのね・・・。
EPICAは前作「The Classical Conspiracy」のフルオーケストラLIVEからのファンなんだけど、P&Eがサーシャ・パースだけに音的な仕上がりはKamelotの前作「ゴースト・オペラ」と近いわ。特にイントロ部分からの展開はかなり意識してるようね。元々、KamelotとEPICAのシモーネはとても仲良しだから両バンドで切磋琢磨しながら成長しているわ。
前作のレビューでも書いたけど技術面が素晴らしいの。これはドイツのスタジオでのレコーディングだけどデジタルだからこそ可能な編集。生弦と歪み音のバランスの良さ、絶妙なマイクアレンジ、メタルながらしっかりと奥行き感のある音圧マスタリング・・・等々、どれを聴いても音場感の一緒な日本のレコーディングとは比較にならないくらい先を行ってるわ。
毎度同じ事を言うけど、デジタルになったからと言って安易なレコーディングする最近の日本の傾向は駄目よね。デジタル=手軽で高音質ではなくて、デジタル=感性の微細な補足がしやすくなったと考えなきゃ。実は時間の節約ではなくてデジタルは時間が大いに必要になるの・・・そう、逆なんですよ皆さん!
さて、EPICAの新譜だけど、組曲を核に濁った水面に磨きをかけるようなシモーネのソプラノと地殻変動が起きそうなうなり声が、時にメロディアスで時に悪魔的。神経を喚起させる生弦とリズム。この分野がお好きの方には是非オススメ!
-EPICAチャンネル-
-シモーネ・シモンズ公式web-
RUSHトリビュート
Working Man
トリビュートアルバムって結構企画先行で手抜きな作品が多いのだけど、1996年にリリースさてたRUSHのトリビュート作品「Working Man」は絶品よ。
参加メンバーも素晴らしく、GtはジェイクEリー、マイケルロメオ、ブレントオールマン、ロバートベリー、ジョージリンチ、ジョンペトルーシ、ジムマシアス、マットギルロイ、ジェイムズマーフィー、マルセルコーエン、スティーブモーズ。Baはビリーシーン、スチュアートハム、カールジェイムス。Voはセバスチャンバック、ジャックラッセル、デビンタウンゼント、ジェイムズラボリエ。DRはマイクポートノイ、ブラッドカイザー、マークザンダー、ディーンカストロノーボ。Keyはマイクピネラ、マットギルロイ、ジェイムズマーフィー、トレントガードナー。と、ビックリ豪華なメンバーなの。個人的にデビンのボーカルが久々に聴けて嬉しいわ。
RUSHと言えば30年を経ても未だに衰え知らずのカナダの凄腕トリオバンド。日本へは1度来日したけど、機材その他のミスマッチングで呼び屋さんともめてそれ以来、World Tourには日本は含まれないらしいのね・・残念。
日本でも特にプロミュージシャンに好まれる彼らは、アルバムをリリースする毎に音に対するどん欲さが伺えるのね。最新作でもドラムの収録にマイクを47本たててみたり、今ではメンテさえ難しいメロトロンを使ったり、DVD仕様の5.1MIXでエンジニアリングの進化を示したりと、常に音作りに対し果敢に挑んでいるのよね。
こりゃ~ミュージシャンからリスペクトされるわ。だからこれだけのアーティストが参加したのでしょうけど、逆に演奏能力の凄さがRUSHがいかに個性豊かなアーティストであるかを痛感させてくれるのね。
でもアーティストにとってトリビュートされるってとっても嬉しい事だと思うわ。ピポ子も頑張ろうっと!
ミシェル・コロンビエ
フィーチャリング・ジャコ・パストリアス
60年代のフレンチポップ映画「ANNA」のサウンドコンポーザーを担当したフランスのアレンジャー、ミシェル・コロンビエ。残念ながら2004年に他界されてしまってるけど、好きなアルバムと言えば、やっぱり1979年の「ミシェル・コロンビエ・フィーチャリング・ジャコ・パストリアス」。日本では当時”フランスフュージョン界のボス”なんて言われていたそうだけど、あまり詳しくは知らないの。
とにかくこのアルバム、ジャコのベースが素晴らしいのよ。ミシェルのピアノとジャコのベース。1曲から緊張感のあるポップなアレンジ。映画音楽を多く手がけているのか音楽からタイトル通りの絵が浮かんでくるの。切れ味のあるホーンセクション、一転、哀愁という漢字がここまで当てはまる楽曲は無いといってもいいくらいの「Spring」のストリングスとギター&ベースに心が洗われるわ。
ピカイチは3曲目の「Dreamland」・・ベースでここまで世界観を表現できるのはやっぱりジャコならでは!もし彼が生きていたなら、どんな音を奏でていたのだろうと思うと残念だわ。ピポ子の周りはジャコ好きが多いので彼の音を耳にする機会が多かったのだけど、どの作品を聴いても嫌味無い主張をしているのがお見事。そして一聴瞭然よね!
ベース音ってそんなに前面に出てくる訳ではないから、余計にプレイヤーの個性が見えてしまうのが怖いわね。どうしてもギターやピアノのように自己完結できるパートに目が(耳が)いきがちだけど、ベースやドラム等のリズム隊がしっかりしてるから自由度が多くなってのにね。その逆は悲惨だけど・・。
本題からズレちゃったけど、オススメのアルバムよ!
FOCUS
Live at The Rainbow
個性的な音楽性をフルに発揮できたのは60年代後半から70年代中盤かしら・・。特に最近の日本は似たり寄ったりの音楽で、怖いのは流れてくる楽曲の残響感まで一緒なんですもの!
そんな嘆きを聞きつけたか、iPodがある曲を自動選曲・・それは1973年のFOCUSというオランダのバンドのLIVE「Live at The Rainbow」。これは知る人ぞ知る名盤で、それがiTunes StoreでDLできるようになり結構なDL数らしいのよ。
当然、忘れていたかのように印税が彼らに降り込まれたんでしょうね。そして最近復活したのよ!しかもヴォーカルのテイスは肩にカエルを乗せて・・ううむ、個性的。
主要メンバーはボーカル&キーボードのテイス・ヴァン・レールにギターのヤン・アッカーマン。リアルタイムに聴いていたスタッフによると、ヤン・アッカーマンは当時のミュージックライフのギター部門でジミー・ペイジより得票数が多かった時もある程の人気者だったらしいわ。
ピポ子は初めてこのLIVEアルバムを聴いた時に、どこかで聴いたことのあるようなリフやメロディ、楽曲構成にギターテクにピン!・・なるほど、この方々が元祖だったのね。ジェフベック等も彼の奏法にかなり影響を受けたらしいわよ。
特に特徴的なのはそのヴォーカルスタイル。歌といっても発声に近い表現でかなり前衛的。どこまで息が続くのかオーディエンスと勝負してるような楽曲なのよ。声も楽器のひとつであり、調理法を工夫するとこんなにもユーモラスで大胆な味付けになるんだと驚かされたわ。1度聴いたらとにかく忘れられないヨーデルXロック・・絶対思いつかないわ!
適度にポップでさりげなくもの凄いギターテク、どこか哀愁を感じるヨーロピアンな旋律。無修正LIVE収録だからこそ感じる当時の空気感。この時代のアーティストはきっと個性のぶつけ合いをしていたのでしょうね。それが評価されようがしまいが、オリジナリティを持たないものは去れ!と言わんばかりのジェネレーション!素晴らしい!
それに面白い現象として、往年のアーティストがiTunesによって再燃焼するのはデジタル時代の恩恵ではないかしら。テクニカルな側面としては、マスタリングの重要性が見直されてきてAbbey Roadスタジオでマスタリングし直されたビートルズBOXを聴いても、デジタル初期のそれと比較してお話にならないくらいの音場感だわ。
たまたま先週「ANVIL」のプレミアム試写の帰りにDISKユニオンでFocus最新LIVE盤を発見。やっぱり人気は健在で平積みしてあったのよ。まだ買ってないけど収録曲はこの1973年の時とほぼ一緒だったわ。また別の機会にレビューするわね。