Within Temptation
Black Symphony
「Black Symphony」・・このタイトルに惹かれて"Within Temptation"というシンフォニック・メタル・バンドのDVDを鑑賞。彼らはオランダで不動の地位を持つチームで、このDVDでは母国で最も大規模な・・で行われたライブ映像を収めたものなのよ。
ボーカルのシャロン嬢は黒髪のオリエンタルな美女で、Sarah Brightmanの様に巫女的な雰囲気を持ちあわせているわ。今年4月に3児の母になったというから、歌の表現がどう変わっていくか楽しみよ。
ゴシックメタルというと、荘厳なシンフォニックのオケを背景にオペラティックな女性ボーカルと荒々しい男性ボーカルの組み合わせというのが主流のようだけど、作品の多くはシャロン嬢の透き通るようなボーカルのみで構成されており、ゲストに男性ボーカルを交えるというパターンなの。
2008年に行われた今回のライブ映像はとにかく豪華で・・・フルオーケストラに映画「薔薇の名前」に出てくる修道士の様な姿のコーラス隊・・さながら年に1度のクラシックの大音楽会というステージ構成ね。背後の大型スクリーンにはH.R.ギーガーの有名な作品、Li嬢と思われる映像がドーンと鎮座しており荘厳で妖しく美しい雰囲気に包まれていたわ。
シャロン嬢の歌声は線が細く残らないけど聴いているうちに母性を感じる"癒し系"で、曲も印象が薄いけど完成度がとにかく高い。どちらかといえば彼らはライブバンドと言って良いのかもしれないわ。ゲストボーカルは男性2人が登場したのだけど、MCで「オランダ№1のグランター・ジョージ!」と紹介されたジョージ・オーストワーク氏は日本人と見まごうほどの容姿。
グランターというのは、日本で以前"デス声"と呼ばれていた際限なく低音を響かせる発声の事で"GROWL"と呼ばれているの。ただ、やり方を間違えるとたちまち声が出なくなってしまうという恐ろしい奏法よ。日本でも以前デスメタル系アーティストがこの発声を用いていたけど喉のコンディションをキープするのが困難で定着はしなかったわ。
しかしジョージ氏はキング・オブ・グランター!オーケストラとバンドの音圧に負けることなくステージ上を華麗に舞いながらGROWLしていたわ!パフォーマンスも常に気を抜くことなく指先まで気を配り、どのシーンを抜いても完璧な佇まいなのよ。
シャロン嬢との掛け合いでは目を剥き口を開け表情筋の全てをフル活動させ・・ちょっと笑える表情なんだけどそれを通り越し感動!この人こそプロだわね。ヨーロッパでは歴史的にもこういった暗く荘厳な世界観が存在するし、聴く側も受け入れやすい。
日本で難しいと思われるボーカルスタイルも体力的にも技術的にも可能だし、何よりも小さい頃からこういった重厚な生音に触れる機会を得て、どんどん耳が肥えてくる・・そして次世代の素晴らしいアーティストが育っていくのよね。
日本のボーカロイドを否定する気は無いけれど、技術だけ向上しPC内での音しか知らなかったら次世代に何を伝えられるのだろう・・音楽業界が低迷してると嘆く前に、再度背景にあるものを考え直さなくてはね。