Movie2009_07

サマンサWho?サマンサWho? / TVドラマ

人生のリセット

最近お気に入りのTVコメディ作品「サマンサWho?」。CS系のAXNでシーズン1,2が放映されてる1話30分のドラマなの。

物語は、主人公サマンサが交通事故で今までの記憶を喪失してしまうところからお話が始まるのよ。実は、それまでの彼女はキャリアウーマンで、いわゆる嫌な女としてブイブイ男を振回していた悪女。すべてがリセットされてしまった彼女は心優しい家族や友人の協力で"ニュー・サム"として再出発を試みるけど、時たま過去の自分がよみがえり自己嫌悪に悩んでしまうの。

この物語で共通しているのが、女性の信念の強さかしら。ポジションに関係なく自分を貫く姿勢が明確に描かれていて、対照的に男性陣はヨワヨワ。その女性同士が衝突する時のスクリプトが実に良くできてるのよ。女性の本性を鋭く巧みに絡めているけど優しさが必ず隠れてる・・・だから見ていてとても面白いのね。そしてヨワヨワの男性陣も、実はしっかり包容力が根付いているから物語のバランスが心地よいのよ。

サマンサを取巻くキャストも実によく練られていているわ。悪女時代の悪友アンドレア、事故前はサマンサに相手にすらされなかったけど今は親友のディーナ、記憶を無くした事を期に親子関係修復に走る両親、そして彼女の過去と今の接点となる元彼と、シンプルながら深みのある演出がなされているわ。

ピポ子が最も好きなのは、悪友アンドレアが自分の美しさを知り尽くした上で発する"アンドレア語録"なの。例えばカフェで窓際に座るディーナに彼女が「反射で髪をキラキラさせたいから、そこどいて!」と席を無理に替えさせたり、わざと大きなカップを持ち「手が華奢に見えるから好き」と言ってみたり、言動や行動が憎たらしく見えて実に可愛らしい。物語が進むにつれアンドレアの心の奥底が垣間見える場面もあったりして、更に好きになっちゃったわ。

日本のホームドラマは鼻につく部分が多いけど、この作品は家族の暖かさや人間同士の繋がりをコミカルでありながらしっかり描かれているのが素晴らしいの。小気味良い会話も、1話1話の完結のし方も実に鮮やかでお見事!見終わった後はいつも爽快な気分になるわ。

でももし、ある日突然自分の記憶が無くなっていたとしたら・・・ちょっと怖いわよね。でも、今まで犯してしまった失敗や後悔を忘れて切り込んでいけるかも!極悪ピポ子になってやる!!・・いや・・出来ないな。

へルボーイへルボーイ/ゴールデンアーミー

アンチ夏休み映画

どこから見ても主演がトム・ウェイツとしか思えない、大好きなギレルモ・デル・トロ監督の2008年作品「へルボーイ/ゴールデンアーミー」

予告編を見た時から『またやったな!』とは思っていたけど、素晴らしい世界観はそのままに、人間臭い味わいがたっぷりあって本当に良かったわ。前作「ヘルボーイ」から幼少期のヘルボーイが父代わりの教授から聞かされていた寝物語・・・遠い昔強欲な人間は傍若無人な殺戮を繰り返し、その惨状に心を痛めた妖精の王は、ゴブリンの鍛冶職人が生み出した疲れも感情もないゴールデンアーミー軍団で人間を制したの。やがて人間と妖精は停戦し、その証として王は黄金軍団に命令を与える為の王冠を分割し、人間と自分で所有する事にしたわ。だが妖精の王子だけはいつか人間が再び愚行に走ると断言し、妖精界を去ったの。

という物語は実は現実で、王子の人間への復讐が始まるの。人間を救う為に命を懸けるヘルボーイ達。でも人間達は彼らの容姿だけを見て、内面の優しさや強さを見ようとはしない。愛する人への愛と人間に対する思いに葛藤するヘルボーイ・・・やがて彼は自分が父親になる事を知るというのが今回のストーリーよ。

人間界は青、異界はゴールドで色分けされているのだけど、毎度の事ながらこの色使いは超ド級に美しいわ。カルシウムを喰らう可愛くて凶暴な歯の妖精、闇市で出会った"子供の出来物"が体からはみ出している老人、相変わらずの生き生きとしたクリーチャー達は想像を絶する素晴らしさ!

でも一番見事だったのはヘルボーイが死の淵で出会った「死神」よ。目は無く、羽にずらりと眼球が並びじっと彼らを見つめるその姿は不気味さを通り越して神聖さが溢れていたわ。人間1人に死神が1人憑くという発想のもと登場した「死神」・・・なるほど、本当はそうなのかもしれないと納得してしまった。

ヘルボーイは前作で自分の思うまま生きてきたけど、今作では人を愛し悩み、人間社会との繋がりやジレンマ、そして父親になる事で生きる事の意味を沢山学んだのよ。商業的には夏休みの娯楽映画として謳われてしまったけど、監督は勿論この作品を"娯楽"とは捉えておらず、"アンチ夏休み"と銘打ち、見る人の心に楔を打込む事に成功したわ。

妥協は何一つ無く、限られた予算で創意工夫し、これだけの逸作を毎回生み出す監督のクリエイター魂には完敗!この作品を作りつつ、あの名作「パンズラビリンス」を構想に着手していたというから半端ない!作品作りに挑むこの"アンチ精神"こそがデル・トロ・スピリッツなのだろうか・・・!しかし不細工と設定されている主役のヘルボーイ・・・ピポ子の目には格好良過ぎなんですが・・・。

エイリアンエイリアン

ギーガー帝国樹立記念

ピポ子が初めて購入した高価な画集は「HRギーガー」!

以前にもブログでご紹介したけど、彼が描き出す独特の世界は一度見たら虜よ!"メタリック・エロティシズム"とでも呼ぶべきか・・人間の骨や臓器を彷彿とさせるデザインは唯一無二の個性だわ。そんな彼を世の中に知らしめた1979年のエポックメイキング作品「エイリアン」をじっくり見る事にしたの!

実は、画集に一目惚れし即購入してしまったものだから、当時ギーガーがエイリアンのデザインをしていた事を全く知らなかったものだから・・。

物語は皆さんご存知の通り。リドリー・スコットが手がけただけあって、さすが!ビターな仕上がりになっていたわ。閉ざされた空間の中での人間同士の葛藤、恐怖、生きる事への信念が実に良く描き出されているの。特にリドリーの女性リーダーとして責任を持って指揮をとる冷静さ、仲間が惨殺され心細くなり泣き出す女性らしさ、絶体絶命の事態で諦めながらも怒りをパワーに変える強さ・・彼女の素晴らしい演技には圧倒!

そして・・やはりギーガーのデザイン無くしてはこの映画の完成は無かったわ。エイリアンの巣窟は、彼が描いていた人間の背骨や器官を模した金属のような物質で出来上がっており、不気味でありながらとにかく美しいの!彼らの卵の造形も素敵で、家に置いておいて孵化させたいくらいよ。

でもエイリアンはやはりエロティシズムがあってこそのエイリアン・・・ラスト近くで、下着姿で安堵するリプリーの体にそっと触手を這わせるシーンは絶品・・・そして納得!観客側には、見事別の恐怖が生まれたに違いないわね・・やるわね、スコット監督!やはり、この作品はホラーではないです。アートです!

Movie Review

2009 7
サマンサ・Who? / TVドラマ
へルボーイ/ゴールデンアーミー
エイリアン

Movie Review TOP PAGE