Movie2009_10

091031.jpgほぼ300
(ミート・ザ・スパルタン)

笑いの陰に努力あり

日本で公開されるのを首を長くして待っていた「300」の完全パロディ映画「ほぼ300(オリジナルタイトルはミート・ザ・スパルタン)」!公開は叶わなかったけど、DVDがリリースされたのでワクワクしながら鑑賞よ。

物語は本家にほぼ忠実に、紀元前480年のスパルタとペルシアの戦いなんだけど、メインキャスト以外のキャラが濃さ満載!ブリトニー・スピアーズがバリカンで髪を剃りながら赤ん坊をあやして登場したり、生け贄に捧げられた美女がアグリーベティだったり、「アメリカン・アイドル」の審査員3人組が登場したりと見所は数え切れないわ。

お色気ネタも満載だけど、どれもこれもお間抜け全開で大爆笑よ。

お気に入りはスパルタ軍兵士の一人なの。屈強でスレンダーな兵士の中で唯一のおデブさん!本家では軍を代表して故郷スパルタにメッセージを届けるという重要な役割を担っているのだけど、何故か間違ってマリブのリンジー・ローハンの所に行ってしまうという旬のネタ付き。

最大の見所の戦闘シーンは、何故かダンス対決・・ラストはキャスト全員によるアメリカン・アイドルのステージでの「I Will Survive」大合唱!そしてMTV復活時のぽよぽよブリトニーが同じ体型と衣装で登場!数え切れないほどのネタが息つく暇無く襲ってきて、笑い疲れちゃったわ。

しかしこれって本作が公開されてすぐ製作されたんでしょうね・・例えパロディであろうとも手は抜かない、そんな意気込みが伝わって来たわ。日本ではきっと軽視されてしまったこの作品、本家とセットで見たらなお楽しめるかも。息抜きの1本に!

091017.jpgANNA(アンナ)

フレンチポップ最前線

1966年にフランス国営放送がカラーになり、そのために制作されたTV番組用の映画・・・それが「ANNA(アンナ)」。タイムカプセルから飛出た幻のミュージカル・コメディーのようで、35ミリ劇場用にマスタリングし直し劇場公開されたのよ。

監督は「ガラスの墓標」のピエール・コラルニック、主演はヌーベルバーグを代表するアンナ・カリーナに作詞・作曲はセルジュ・ゲインスブール、音楽監督にミッシェル・コロンビエと期待せずにはいられないスタッフなの。

物語は広告代理店の社長セルジュが偶然撮影中に写ってしまった娘(アンナ)に一目ボレ。写真を大伸ばしにてパリの街中に貼出し彼女を探すのであった。一方アンナはイラストの仕事を見つけて忙しい毎日、でもその会社はセルジュの会社だった。メガネをかけたキュートなアンナが体験する恋と仕事の板挟み・・・というシンプルな設定よ。

田舎からパリにやって来たアンナのちょっと悲しい恋愛物語なんだけど、この映画の魅力は何と言ってもそのテイスト!!

アメリカン・ポップとは一味違うフレンチポップ、きっと67年にTV放映された時に影響されたクリエイターは沢山いると思うわ。フレンチポップ・カルチャーの原点ともいえるこの作品は当時のアメリカのポップスタイルに刺激されたカラーリングや素材感がとても今のトレンドとマッチするの!

66年当時のポップさが98年に突然ワープされノーマルなパリの風景までもがこのアンナのためにセットアップされてるような感覚に思えてしまうから不思議~。音楽もとてもセンスが良くって、メインのセルジュ・ゲンスブールの楽曲に磨きをかけたのがミッシェル・コロンビエ。メローなサウンドに心地よいリズムは色彩とマッチしてPOP本来の意味を感じさせてくれるのよ。

ピポ子的には古着天国を堪能させて頂いたわ。色々な視点から映画を語れるとても面白い一本ね。

関係者によると日本での公開当時は、渋谷PARCO Part1の特設会場でアンナ・ショップが併設され、Tシャツや透明コート、プリーツスカート、ボーダー柄ソックスなどが販売されていたそうよ・・・う~行きたかった!

091010.jpg未来世紀ブラジル

憂鬱な幻想

近年カルト系映画の代表作としてよく耳にするタイトル「未来世紀ブラジル」・・。見よう見ようと思ってなかなか見る機会がなかったのだけど、やっとその時が!

テリー・ギリアム監督の気合いの入った作品と聞いていただけに期待大。タイトルも摩訶不思議、ジャケットもシュール、テーマは「ぶざまなほど統制された人間社会の狂気と、手段を選ばずそこから逃げ出したいという欲求」というピポ子好みの内容よ。

始まってからずっと「あ、ここ見たことが・・」と記憶に引っかかるシーンが続出し、いかにこの作品がオマージュされたり、してたりしているのかが理解出来たわ。

舞台は"20世紀のどこかの国"、情報省はテロの容疑者を誤認逮捕してしまうの。唯一その真実を知る美女ジルが抗議しても無視されるばかり。一方情報局に勤めるサムはこの事実を隠蔽するため試行錯誤していたの。

しかしサムは、ジルが毎晩夢の中で恋い焦がれる美女にそっくりだったことで、エリートの道を踏み外してしまう・・?と簡単に言うとそんなストーリーだけど、階級社会への批判や皮肉が存分に表現されているわ。

強烈な登場人物、夢の中に登場する禍々しいあやかし、そして階級構造のアイコンとして登場する"ダクト"・・どれをとっても常人の発想でない!この世界は、山のような書類の手続きが必要で融通が全く利かないし、そのくせ町中は至る所にゴミ箱が設置され、ゴミを落とすと怒られる。

こんな矛盾もエッセンスとして織り込まれてるのが憎いなあ・・。

特に気になったのは、美容整形を繰り返すサムのママね。地位と有り余る財産を持つ彼女は美に取り憑かれ、息子に固執し、滑稽だけどどこか悲しい・・女性として凄く理解できるし惹かれるわ。

『未来』とタイトルでうたわれてはいても、背景もファッションも実にアンティークで可愛らしいし、この独特で強烈な視覚効果はかなりショック!

ブレードランナー』同様、公開当時はスタジオ側の要望でエンディングがハッピーエンドに修正されてしまったけど、DVDはオリジナルの重いエンディングバージョン。いや〜でもこのオリジナルラスト以外考えられないわ!!

逃避と妄想を夢つながりで巧みに織り込む映像表現はお見事ね。そして、その夢が痛みを和らげる唯一の手段・・。見終わってしばらく、名曲「ブラジル」が頭の中をグルグル回っておりました・・オススメの一本よ。

091003.jpgSTAR WARS / エピソード4

銀河神話の夜明け

「STAR WARS」を見た事がなかったのだけど「エピソード3」を見る機会があり、大ブレイクした最初の1977年作品「エピソード4」を見てみることにしたの。話ではDVD版はお化粧が施されていて、当時には無かったカットとかCGの追加とかで今風に近づけてあるらしいのだけど「お?ここかな?」と思う位であまり違和感はなかったかも。1977年と言えばピポ子がまだ生まれて間もない頃なので、当時の質感や、SFに対する世間の評価はどんな感じだったのかは誰か教えて欲しいわ。

このDVD版「エピソード4」、ルークがジェダイの騎士オビ=ワン・ケノービやR2、C3POと共にレイア姫を救出するという有名過ぎるストーリーだけど、とにかく新鮮で飽きさせない!ルークがパイロットのハン・ソロを訪ねて訪れた酒場では『スペースコブラ』も真っ青の愛嬌あるエイリアンが満載で、何事も手探りな撮影当時の技術ながらも"これだけのものをやろうと思えば作れるのだ!"という心意気を見せつけられた気がする。

冒険と愛とロマンス、コメディ、すべての娯楽要素がバランスよく取り入れているし、何より日本人として客観的に日本の美しさを認識させてもらえたことが嬉しいわ。着物の袂、兜の曲線、編み上げた髪・・どれをとっても誇らしいもの。色使いの描写も単純ながらそれぞれの意識を的確に表現しているわね・・やっぱり黒沢監督の影響かしら。

唯一残念なのはここに日本人が存在しないという事かしら。オファー通りオビ=ワンを三船敏郎が演じていたら・・もっと日本人役者のあり方は変わっていたかもしれない。皮肉なものよね、当時は子供向けのSFとしか思われていなかったからしらね・・。

しかしこうして今もなお色褪せない名作として君臨しているのは当然だわ。"創意工夫と情熱"。この2本のライトセーバーが輝く限り銀河神話は語り継がれていくんでしょうね。

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2009 10
ほぼ300
ANNA(アンナ)
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STAR WARS / エピソード4

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