Movie2010_01

091230.jpgアバター(2009)

精霊との戦い

J・キャメロン監督作品「アバター」。今回は作品そのものの期待と同時に、撮影・上映システムにもとても興味を抱いていたのよね。それはIMAXデジタルシアター+3Dという最新技術!ではまず先に上映システムのレヴューを・・。

IMAXデジタルに関してはMJの「This is It」でご紹介したとおり、巨大に湾曲したスクリーンと劇場と一体化されたマルチ音響システムで絶対に自宅では体感できない空間を提供してくれるのよね。そこに+3Dとなるとどうなるのか!・・あえて事前のプレミアをパスして体感してきたわよ。

さて、ここで迷った事が一つ。「3Dだと後付けの字幕って結構見づらいかもしかない・・、スクリーンも大きいし・・」と言うことで、あえて吹き替え版を選択。座席もセンターを確保して準備万端。

元々「アバター」はキャメロン監督が、3Dを念頭に置いて企画した作品だけに、随所に、奥行きを意識させるカットが散りばめられてるの。まぁ、ある意味サービス精神旺盛なんでしょうね。上映時間は160分・・3Dでこの長さだとちょっと辛かった。何が辛いかって、3D専用のメガネは微調整する部分が無いので、長時間だと顔との接点は痛みだし上映終了後も後がクッキリしちゃうのよ!

それと、IMAXだと高解像度なので、3Dメガネの質の悪さを感じてしまう。だからIMAX+3Dで鑑賞するときは体調万全で行かないと、視神経に過度の負荷がかかってしまい疲労感を覚えるかもしれないわ。上映中に何度かメガネを外して確認してみたのだけど、視野が広まってかえって迫力を感じる場面も多かったの。だからIMAXで長めの作品に関しては3Dメガネを改良しないと駄目ね!これは必須事項よ!関係者の皆さん!

では肝心の「アバター」。

キャメロン曰く、『この映画を理想の映像に仕上げる為に、機材の進化を待っていた』。なるほど、この世界観を表現するには今の機材スペックが最低条件なんだろうな確信したわ。数年前の機材でもやって出来ないことは無いと思うけどコスト的に採算取れなくなるし、膨大な時間がかかるし・・。

物語は22世紀、人類が希少鉱物を確保するために惑星パンドラに前線基地設けて、神秘的な先住民を駆除しようと、遺伝子操作で彼らそっくりのアバターを作り、意識は人間が遠隔的にリンクさせながら情報収集にあたるのだが・・。

テーマは自然とのつながり、人間同士の共鳴感や、神話的な命の継続性等をシンプルにまとめ、圧倒的なヴィジュアルで見る側をひきこむの。面白いのは過去のキャメロン作品を自分でオマージュするかのように演出してるところかしら。だから、シガニー・ウィーバーも当初役名は、シプリーだったり、サブではサラ・コナーを彷彿させるような女性パイロットが出てきたりとね。やっぱりキャメロン作品の原点は、女性の愛に後押しされる力強さかしら。

ヴィジュアルはもう、ただ驚きね。背景のフォトリアルなCGはもう言われないとわからない。「アバター」での先住民や動物達はあえてCG処理を強く出して神秘的な存在を演出しているのでしょうね。米系のレヴューの中で、「先住民の主役の女性に違和感があって感情移入できない」なんてコメントも多かったけど、それは普段オーバージェスチャーなコミュニケーションに慣れてる人達のコメントね・・充分感情移入できたわよ。

前半はちょっとロマンチックな展開もあって、D系ファンタジーなの?思いきや、中盤からのダイナミックなヴィジュアル展開にただ圧倒されっぱなし。世の中には様々なマニアの方々がいらっしゃると思うけど、全対応といった感じね。

キャメロン監督がまた一つ、映画業界にエポック的な軌跡を残したことは間違いないわね。時代を待てるだけの余裕はどこから来るのかしらね。今の時間に翻弄されてばかりのピポ子にとって別の意味で参考になる人物だわ。

「アバター」は予告編ではわかりにくい作品だけど、素晴らしい作品よ。是非劇場でご覧になることをオススメするわ。ちっちゃなTV画面じゃダメダメ!!

100124.jpgカールじいさんの空飛ぶ家(2009)

圧巻の冒頭シーン

ピクサー3D作品「UP~カールじいさんの空飛ぶ家~」。

この作品は予告編を見た時からずっと気になっていたのよね。なにせ主人公は、おじいちゃんとおデブの子供・・ピポ子の大好きな設定なんですもの!

妻との思い出が詰まった家を立ち退かなくてはいけなくなった頑固じじいのカール・・窮地に追い込まれた彼は、大量の風船を使って家を飛ばし夫婦で夢見た伝説の滝"パラダイス・フォール"に向かうの。たまたま家に紛れ込んでいたボーイスカウトのラッセル少年も同行することになり・・というストーリーよ。

冒頭、カール少年が愛する妻と知り合ってから妻を看取るまで、全く台詞なしでカール夫婦の結婚生活が描かれているのだけど、ここが実にお見事!キャラクターの細やかな表情や動きで、背景や時間経過が表現されているのよ。ピクサーの得意とする部分よね!迂闊にもその冒頭の部分でぼろぼろ泣いてしまったわ。

ただ、ストーリーの展開や登場するキャラクターは毎度の事ながら素晴らしいけど、敢えて3Dにする意味があったのかというのは疑問ね。部分部分で奥行き感を見せたいのはわかるけど、元からしっかりと作り込んであるので不要だろうし、字幕がやはり見づらいの。じいさんの憂鬱な表情や子デブちゃんの張りのある肌の質感は3Dではよく見えない。

六本木TOHOシネマズの3Dメガネは、メンテナンスが悪く傷も多くて、メガネを外して見た方がディテールの細かさや発色の美しさが良く分かったのよね。3D時の画面の暗さは上映システムにも関係があるかもね。「アバター」程には3Dが活きていないという感は否めないわ。

物語のカールじいさんがラッセルのひたむきさに凝り固まった心を開いていくという展開は王道ながら良かったし、亡き妻への愛がとにかく全編通して痛いほど感じらて良かったわ。うちのスタッフ曰く、この作品は来週公開される「ラブリーボーン」とテーマが同じかもとか・・思い出の家に執着し己を現世に"自縛"したじいさんが、家を手放すことでラッセルとの楽しい未来を手にし"解放"されるという部分よ。愛が基本なのよね。

確かに人間は新たな第一歩を踏み出す為、過去の遺物は捨て去るわよね。そういう意味合いでもこの映画は"アップ"なのかもしれないわ。今回、同時上映の「晴れ、ときどきくもり」も大変素晴らしく、子供の時に持っていた"ホカホカしてちょっとくすぐったい心"を掘り当てられた気がする。現状に縛られて、上昇志向を見失いつつある方にはオススメ!

100116.jpgゴットファーザーPart2

ドン、マイケルの孤独

1972年に全世界に衝撃を与えた映画「ゴットファーザー」の続編「ゴットファーザーPart2」。
「Part1」が公開されてから3年後に発表されたのだけど、間違いなく映画界に金字塔を打ち立てた名作で有ることは間違いないわ。

映画って1作目が良くできていると2作目は薄まるケースが多いけど、この作品は共に濃いわよ。今作は、亡き父ヴィト・コルレオーネの後を継いで2代目ゴッドファーザーになったマイケルの現在と、ヴィトがコルレオーネ・ファミリーを築き上げていく過去の物語が同時進行していくの。

様々な人々の陰謀や利害関係からファミリーを守り、ドンとしての風格が滲み出るマイケル・・前作の冒頭で家業や親に反発し恋人と明るく笑っていた青年が、今作では殆ど表情を消し鉄仮面のようになっていたわ。彼がどれほどの重い宿命を背負ってしまったのか・・その悲哀が十二分に表現されていて圧巻!

唯一、マイケルの表情が強く表れたのは2カ所ね。

実兄フレドが自分を裏切ったと知った時と愛する妻がわざと流産をしたと知った時よ。どちらもアル・パチーノの驚異的な演技で、映画史上の名シーンになったんじゃないかしら。身内の裏切りというありえない状況に遭遇し、ショックで瞳の奥にじわじわ闇が落ちていく・・実際にはそんな映像効果はないけど、そう見えたのよね。これって見ている人の別の感覚を呼び起こしてしまう位の演技って事なんだわ。

そして、愛する妻にもう自分への愛は無く、子供を堕ろしたと告白された衝撃・・マイケルはファミリーは守ったけど"自分の家族"は守りきれなかったのね。この時は激しく妻を殴ったけど、その後、妻が子供達を内緒で訪ねた際、無表情でドアを閉めたのよ。これだけの奥深く静かな怒りを表現できるって・・。

ラストは過去にさかのぼり、兄弟全員が父親ヴィトの誕生日パーティの準備をし、帰ってきた父親を玄関に迎えに行くの。でも、マイケルは出迎えず、テーブルでタバコを吸っているシーンで終わるわ。これがマイケルの未来への前兆であり、彼がこれから孤独と共に生きる事が理解できる。過去の父と現実の息子を交互に見せる事でストーリーがメビウスの輪のように描かれ、人の上に立つ厳しさ、人を愛する苦しさが絵巻の如く書き記されているわ・・これぞ"人生のバイブル"!

書きたいことはまだまだあるけど、これほどまでに人間の"心"の色を巧妙に描き出した作品というのはそうそう無いでしょうね。だからこそ名作と呼ばれる所以なのだわ!後世に残すべき1本。間違いない!

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2010 1
アバター
カールじいさんの空飛ぶ家
ゴッドファーザーPart2

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