Movie2007_12

img229d7c8dzikdzj.jpeg「オール・ザット・ジャズ」

自分という名のショウ、スポットライトの光と影

ショウビジネスの裏側をえぐる1972年の名作「オール・ザット・ジャズ」

有名な振付家であり演出家であるボブ・フォッシーの自伝的な作品で、監督や脚本も彼本人が手がけているのよ。

内容は実に生々しく、お酒や煙草、女性に明け暮れながらブロードウェイのステージを手がける彼が不規則な生活と過労から倒れ、病床で自分の人生を回顧していくの。常にショウビジネスというものにまっすぐ向き合い、凡庸なものを嫌悪するフォッシー自身の強い信念が伝わってきたわ。

印象的だったのは、台本の初読み合わせをしている場面。内容の面白さに周囲の人達は大笑いするのだけど彼の感性はそれを認めず、鉛筆を折ったり指をきつく握ったりしてその時間を耐えるのよ。周囲の笑い声はやがて無音になり彼の怒りが際立ってくるという演出なのだけど、実に素晴らしかったわ。

又、彼が倒れた事によりクライアントと弁護士が経費の計算をするシーンは、ショウビジネスに生きる人間にとって必見!! 30年前の試算だけどとても参考になったわ!!

現実と死の狭間の2つの世界が交差するという構成も斬新で、とにかくダンスシーンは息を飲む凄さよ。この作品が79年当時に発表されたなんて信じられない。自分の病を、そして死すら"ショウ"として見せてしまう芸人魂は真のエンターテイナーの証拠ね。

果たして自分がこの世を去るまでどれだけのものを残す事が出来るのか...

imgfcdd69b1zik7zj.jpeg「300」

絵画的芸術映画

映像質感が話題になった作品だけど、確かに凄かったわ・・・。紀元前480年、スパルタ王レオニダスの元にペルシアの使者が訪れ服従を要求するの。誇り高き戦士の国スパルタはこれを拒否し、わずか300名の軍勢で100万のペルシア軍を迎え撃つというという壮大なストーリーなのだけど、とにかく実写とCGの境がわからない〜。

画像のコントラストがはっきりしている為独特の質感があり、場面場面が1枚の絵として完成しているのよ。セリフを発しているから明らかに実写なのに、もしや絵なんじゃないかと錯覚する事がしばしば・・・こんな事は初めてだわ。

見どころは戦闘シーン!150/秒コマのカメラを3台同時に回し映像のスピードを瞬時に変えて編集する事によって、見事に緊張感のある場面が完成してるわ。更に驚いたのは生贄にされた女性が目覚めるシーンかしら。水中で撮影された映像を加工したらしいのだけど、ゆらゆらと踊るように目覚める美女はとても神秘的で、牲になる悲壮感が漂っていて良かった〜。

そして何より忘れちゃいけないのは個性的なキャラクター!ペルシア王はエジプト人のような太いアイラインと山形眉毛で妖しい魅力を醸し出していてインパクトNO.1!彼のハーレムにはヤギの仮面を被った吟遊詩人がいたり、セクシーな踊り子さんがいっぱいなの。一瞬「サバト」を彷彿とさせるものがあるけど、とにかく見ていて飽きないわ。ペルシア兵も日本の戦国武将のようなコスチュームだったし、様々な国の文化が混ざりあい融合して独特の世界を完成させてるのよ!

生身の人間の撮影より、その後のコンピューターでの加工や編集に時間をかける事によって、ここまでの作品が出来るというのは物凄い事だわ。

もうこうなったら、作り手側の世界観と想像力が勝負になってくるというわけね!ある意味今後映像の世界も戦国時代を迎えるのかも・・・。ピポ子もスパルタの精神で戦い抜いていかないと・・・やられる!!

img4d7c953azik7zj.jpeg「Mr.インクレディブル」

やはり世界は広かった…編

フルCGアニメ初鑑賞!半端じゃなく素晴らしかったわ。

ピポ子は日本のアニメが大好物で海外の作品はまったく興味がなかったのだけど、この映画を見てから触覚が動き出したわよ〜。まずはストーリーが面白い。スーパーヒーローが世界の平和を守る勧善懲悪の単純なお話ではないの。

ヒーローを取り巻く厳しい現実、人間関係などがきっちり描かれていて考えさせられちゃうわ。正義の味方なら人助けは当然なのだけど、自殺を望む人間を助けた事で訴えられたり、そのせいで仕事を失い保険会社に勤務したけど顧客より利益を重んじる会社に嫌気が差してしまったり...。

ヒーローの人間臭さが良くでてるわ。そして面白いのは、悪役がかつて彼に憧れて成長した少年という設定ね。歪んだ愛情が少年を悪の化身に変えてしまったというのも実に興味深いわ。

この作品のテーマは「家族愛」と思われるけど、様々な愛の要素が含まれているの。更に驚かされたのはキャラクターの表情と動き...実際の俳優さんでもこれだけの演技が出来る人っているのかしら〜と思う程の表現力!そして髪の毛1本1本の動き、エンドロールのクレジットの出し方まで手を抜いていない!!

これだけのクオリティの高さを見せつけられてどう戦う!?ジャパンアニメ!!

img57309f85zikczj.jpeg「ナチョ・リブレ」

やはりジャックは凄い奴

「スクール・オブ・ロック」でお馴染!むちむち俳優ジャック・ブラック主演「ナチョ・リブレ」

何とも爽快でテンポの良い作品よ。ストーリーも簡潔で、何をやってもダメな修道士が、修道院にいる孤児たちにおいしいものを食べさせたいが為に覆面レスラーとなり、ファイトマネーを稼ぎ出すというものよ。

修道士たるもの暴力は禁止されてるし、新しくやって来た美しいシスターに"暴力は罪"ときっぱり言われてしまっては内緒で戦うしかない・・・結局はバレてしまうけど、シスターを始め孤児たちが試合の応援に来てくれて彼は見事優勝を勝ち取るの。

ストーリーは'タイガーマスク'を彷彿とさせるものがあるけど、メキシコが舞台だから空や地面、家の中の道具・・・すべてが原色で明るい明るい!

登場人物も曲者ぞろいで、'キャプテン翼'の花輪兄弟の如く素早い動きを見せる双子レスラー、孤児のおデブちゃん、修道士の相棒のやせっぽっち君、そのやせ君に恋するプロレス会長のふくよか娘など、よくもまあこんな人達を集めたものだと感心しちゃう。

レスリング衣装からお腹の肉がはみ出るコミカルな容姿、己の正義を貫き太陽のように明るく力強く生きる姿・・・まさにこの作品はジャック・ブラックの為に作られたと言っていいわ!

見終わった後には嫌な事が全て浄化されちゃうの。しかもジャック本人、作曲歌唱と更なる多才振りが・・・。この作品はコメディというジャンルにくくられるのだろうけど、日本にこれだけの作品があるのかしら?根底にあるテーマといい役者といい、まだまだまだまだ足元にも及ばないよなあ・・・。

img3c1537fdzik6zj.jpeg「プラダを着た悪魔」

お約束のハッピーエンド

話題になってから時間を置いて見た「プラダを着た悪魔」

うむ、日本人がとても好きそうな映画ね。頭脳明晰だけどおイモなお姉ちゃんが、業界一のファッション雑誌の編集部に配属され、NY中で知らないものは誰もいないやり手女編集長の下で働く事になっちゃうの。同僚も皆美しくセンス抜群!一人浮き立つお姉ちゃんはそのイモっぷりから数々のいじめに合い、遂に戦う事を決意し美しいレディに変身するのよ。

仕事も完璧にこなし編集長の信頼を得て重要なポストにつく事になったけど、彼女は自分の信念を通し抜き新たなステップを踏む・・・というお話よ。

確かに女性にとって興味深い要素が盛り沢山ね。まず登場するお洋服の数々はものすごく素敵で"動くファッション雑誌"と言っていいくらい。見てるだけで楽しいわ。そして女性が仕事で成り上がるという"わらしべ長者"現象はとても小気味良くて、日頃のストレスが軽減されそうよ。そして恋話。美しくなると知り合う男性もランクアップするという方程式により、昔の彼はちょっと置いておく・・・とまあ「女性の理想」がてんこ盛りよ!!

ピポ子にとってはハッピーすぎる内容の為イマイチだったけど、原作の方は内容がブラックらしいので、是非そちらを読んでみたいわ。特に印象に残ったのは、おイモちゃんをいじめていた同僚の女性があきれたり驚いたりする表情が見事だった事、編集長がマスコミの前に出る直前に笑顔を作って車を降りる場面に"真のプロフェッショナル"を垣間見た事かしら・・・。

この話はもともと「Vogue」の編集長をモデルに書かれた作品だそうだけど、女性がここまで地位と権力を手にするには相当の努力と犠牲があったんでしょうね。何だか考えさせられちゃうわ・・・。

日本語の吹替えは、直訳しすぎでしょ?と言う部分はあるけど良い感じだったし、週末女性同士でワイワイ言いながら見たら凄く楽しいかもね。ひとつ教訓として、「女たるもの外に出る時は、メイクと服には気をつけなくちゃいかん!」痛感いたしました、はい。

img177011c2zik9zj.jpeg「スターダスト」

星に願いを

97年にニール・ゲイマンのお話にイラストが加えられDCコミックとしてお披露目。99年にノベライズ化されベストセラーになったファンタジーなのよ。

物語は18世紀、イングランドの雑貨店の青年が『一週間以内に落ちた流れ星を持ってきてくれれば、恋人になっても良い』と持ちかけられるの。でも流れ星が落ちた壁の向こうの場所は不思議な空想の世界・・・そして冒険が始まる・・・って感じね。

空想の世界の住人は変な生き物がいっぱい。ミシェル・ファイファー演じる魔女で、星の心を栄養源に若さを維持しようと、星くずを食べる者、この世界を牛耳ろうと画策する王家の子孫、ロバート・デ・ニーロ演じる空飛ぶ海賊などなどよ。

そして主役の流れ星はクレア・デインズ、この世界に飛込む青年は若手のチャーリー・コックス。

ファンタジーだから子供向けと思ったら大間違いね。とってもシニカルだから、あえて大人向けと言わせていただくわ。お話の基本は流れ星と青年が、お互い気になる存在なって、青年は旅をしながら男になっていくという流れだけど、二人の関係以上に、愛がある作品なのよね。

たいてい主役以外の設定はオマケみたいな存在なんだけど、脇役に説得力があるの。全体よりも勝る脇役の存在感ってとこかしら。

特に私としては魔女の老いに震えがきたわ・・・怖いのよ、この歳になってくると顔のたるみが・・・。人ごとじゃないわね。星くずで若返るのなら私も食べたいわ、美女の心臓・・・ぅほほ。

映像美としてもとても見応えがあるし、音楽もいいわ。

imga395cc97zik3zj.jpeg「シティ・オブ・エンジェル」

限りある時間、あなたの後ろに天使が…

あるお芝居に酷似している点が多い気がした「シティ・オブ・エンジェル」(オリジナルは「ベルリン天使の詩」)

冒頭で登場人物が全員黒ずくめの衣装で登場する部分やテーマもかなり近いのでびっくりしたわ。ピポ子は、有名俳優がドーンと出演している映画は余り興味がなかったけど、こうやって別の視点で見ると結構面白いものね。

天使が人間の女性に恋をして、彼女と生きたいが為自分が人間になるというストーリーなのだけど、ピポ子にとっては重かった...。カテゴリーとしては恋愛ものとして扱われる作品なんだろうけど、様々な宗教観から"今生にて生きていく意味"という事を考えさせられる戒め映画だわね。

生きるということは修業である...そんなテーマを強く感じるの。しかし、主演のお二人の演技は圧巻よ。特に天使を演じたニコラス・ケイジは凄い!人でないものを演じるという事だけでも難しいだろうに、初めて人間として"触れる"という感覚を知った瞬間の表現は感動ものだったわ。

結末が予想通りになってしまったので残念だったけど、たまにはこういう作品もいいわね。物を作る人間は、知らず知らずのうちに目にしたものに影響されてしまうというのはよくある事だけど、テーマを理解し演じ手がしっかりとしていれば幾通りの逸作を生み出せるに違いないかもしれない。でもピポ子は、この作品に影響を受けそうもないなあ...。

Movie Review

2007 12
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ナチョ・リブレ
プラダを着た悪魔
スターダスト
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