Movie2008_02

img0f33b4f4zik1zj.jpeg「アメリカンビューティ」

一撃、美感性

見終わった後震えが来ました・・・こんな事は生まれて初めて!「アメリカンビューティ」この映画を見て例えようもない焦りと危機感を感じたのはピポ子だけかしら。。

作り手としてこんな物凄い作品を生み出せるなんて驚異としか言い様が無い!

公開当時「アメリカンビューティ」というタイトルに女性のお腹の部分と薔薇で構成されたポスターを街でちらっと見かけ『ああ、女性の美がテーマの恋愛映画なのかな・・・』と思った記憶があったけど、とんでもない!ピポ子は愚かでした・・・このポスターにすべてが凝縮されていたんだと見てから気付きました!

物語はある家族の崩壊を描いたものなのだけど、あまりにも見事なストーリーでアドレナリンが異常に増えてしまったわ!口うるさい妻と反抗的な娘を持つ中流階級のダメダメ父はある日娘の同級生に恋をするの。彼女と結ばれたいという欲求から父は一変!隣に住む風変わりな青年からドラッグを買い、体を鍛えて自信をつけるのよ。

一方娘は自分の容姿に不満を持っていたけど隣の青年が自分に興味を示している事を知り徐々に魅かれていくの。そして妻は見栄っ張りで仕事で成功することばかり追い求め、揚げ句の果てに同業者と関係を持ってしまう・・・そんな彼らのひとつひとつの存在の輪が浮遊し、絡まり、最後は壊れていく。

キーマンは隣に住む青年とその父よ。軍隊出身の厳格な父に従いながらもドラッグを売る青年はいつもカメラを通して「美しい」ものを見つける事に喜びを感じているの。空を舞うゴミ袋やホームレスの死に顔からも「美」を見いだし、その無償の美しさに感謝をする・・・確かにその通りだと思うわ。

この世のどんな部分にも「美」は存在する。それは視覚的なものに特化している訳でなく、心の眼で捉えるからこそ見つけた時の喜びは大きい。言葉で表すのは本当に難しいけど、ピポ子のアンテナはそんな風にキャッチしたわ。そして青年の父は誤解から自分の息子と隣の中年男性が関係を持ったと思い込みショックを受けるのだけど、自分が抑えてきたのかもしくは自分の持っていた本能に気付いてしまいある決断をするの。

この展開はかなりショッキング!登場人物全てが「美」を追い求め、個々の幸せの形を目指そうとする。しかしそこには欲というものが発生しそれによって己の真の姿に気付く事になる・・・それが人間の愚かさであり可愛らしさでもあるのかもしれないわ。

何だかAMAZORAの表現する部分と酷似してる気がする!ああ・・・とてもじゃないけど書き切れないので気になるシーンや役者さんについては改めて別の機会に書かせて頂きたいと思いますので、その時は皆さんよろしくお願いします。

監督のサム・メンデスに敬意を表しつつ一言、『こんな凄い作品を作ってくれて有り難う!!』

img6888cca7zikfzj.jpeg「ロスト・チルドレン」

不純物の無い愛、幻想と現実の間

映画「アメリ」を見たら気になってジャン・ピエール・ジュネ監督の「ロスト・チルドレン」を見たの!

うわっ・・・こりゃどうもすみませんと言うくらいのオリジナリティ。やはり画面全体が赤と緑の色使いで構成されていて、何とも言えない異次元空間を描き出してるわ。

ピポ子が思うにこの作品は油絵のよう・・・何度も何度も絵の具を重ね塗りして深い味わいを出しているから。ストーリーもこれまたどうしてこんな事を思いつくのか頭の中を覗かせて欲しいと思う独特の世界観!影響を受けた人もかなりいると思われるわ。

物語は、近未来のある港町で次々と子供が失踪するの。実はその裏では脳だけで生きている先導者とその子供である7人のクローン人間が糸を引いていて、クローンの1人が"夢を見られない"という欠陥を補う為に一つ目教団を使って子供たちを誘拐し夢を盗んでいたの。

ある時サーカス団の怪力男が弟をさらわれて、一つ目教団の本拠地に乗り込もうとするのだけど一筋縄ではいかない。シャム双生児の姉妹が取り仕切る窃盗団の一員である9歳の美しい少女が弟奪還に力を貸すが、二人の前に次々と困難が襲いかかる・・・という内容。

しかしシャム双生児の姉妹が二人で料理を作ったり、一つ目教団の集会、脳だけで生きている男・・・どれもビジュアル的には一度見たら忘れられないわ!でもこの作品で一番伝えたかったのは"究極の純粋な愛"に違いない。

9歳の少女と知能がやや遅れているものの優しい怪力男の愛。「レオン」とは一味違うわよ〜!一番印象深かったのは夜休んでいるときの二人の会話で、男が少女の後ろにぴったり寄り添い、少女は一言「なにをしてるの?」男は「ヒーター」大人びた口調で男を守ろうとする少女と、異性愛を超越した愛情を少女に感じている男・・・どちらもお互いを必要としているの。

こんなにドキドキしたのは久しぶり!そこらのラブロマンスなんかより全然素敵なの!!

こんな風に演じられる二人は化け物級ね。最近心が渇いてるなと思う方必見ですわ!でも、どうしても大男を演じているロン・パールマンがトム・ウェイツに見えるのはピポ子だけだろうか・・・。

imgfbd681adzik7zj.jpeg「シックス・センス」

ホラーじゃないのよ!

もしピポ子に第六感があったとしたら・・・、それは「シックス・センス」。

公開されてから9年の時を経て遂に見たわ!ストーリーは小児精神科医の男性が、10年前に治療した少年に完治していなかったとなじられ発砲されてしまうの。その事件後から彼はより一層仕事に没頭するようになり、結果夫婦仲も冷えきってしまったわ。

医師は新たな患者である少年と出会い、なかなか心を開かない彼を救おうと努力を重ねた結果ようやく信頼を得る事が出来、少年が死者が見える事に怯えているという事を知るの。

学校では異端児扱い、母親に真実を告げられない少年が死者と向き合う事により勇気を持ち、物事も好転していったのだけど・・・!!

こんなストーリーを作れったって無理無理!もう土下座するしかない。おまけに役者陣の演技は見事過ぎます!医師が専任を降りると少年に告げた時の二人の表情や、少年が母に真実を告白した時の表情には、演技とは思えない深い愛情が伝わってきたわ。物語が進むにつれ役者さんにシンクロし過ぎて、降霊術を行った霊媒師の気分よ!

『何かある・・・何かある』と思わせる演出の憎らしさといい、脚本の素晴らしさといい、何だか心地よい敗北感。ああ・・・この作品は公開前ホラーだと紹介されてたけど、公開後はまったくそんな風には言われなくなったわ。生きてる間に絶対見てみてね・・・そうすれば・・・きっと・・・。

img8f254f7fzik1zj.jpeg「アイドルワイルド」

ナイスキャスト!

映画「アイドルワイルド」・・・アウトキャストが主演しているということで前々から気になっていた作品だったの。実際見てみると予想に反して映像は良くできていたわ。

場面展開では映像が逆転して切り替わったり、オープニングで中心人物がモーフィングで大きくピックアップされたり、大勢でのダンスシーンでは中心ダンサーだけがスローな動きで捉えられたりと実にお見事。

内容は1930年代のアメリカ南部、アイドルワイルドに住む二人の青年の生き様を描いた物語なの。ギャングの叔父に育てられ、クラブを経営しつつ店の人気シンガーでもある青年と、その店でピアノを弾く葬儀屋の息子はお互い音楽が大好き。

しかし、ギャング紛争が起こり、二人はその渦に巻き込まれてしまう。シンガーの青年は離れて行ってしまった家族を取り戻す為、ピアノ弾きの青年は愛する歌姫と共にシカゴで音楽の仕事をする為にと、それぞれの道を歩もうとするのだけど最後の展開に「あれっ?」でガックリ・・・。

ちょっと内容的には三文芝居風になってしまい残念だけど、クラブのショウやダンスシーンは圧巻だし、"時間恐怖症"であるピアノ弾きの青年の部屋に飾られてる沢山の鳩時計が一斉に動き出すシーンも感慨深いわ。衣装も髪型もメイクも当時のものを忠実に再現したというだけあってお洒落よ!

人間は常に時間と共に生き、時間に追われて生きている。最期の時を自分はどんな風に迎えるのか、その為には日々後悔の無いように生きなくてはいけない・・・そう強く思わされる作品よ。

創作物はピポ子が死んでも残るものだから、締切りが近いからといって妥協しちゃダメね。でも息絶えるその時までずっと現役でいたいなあ・・・その為にはまず体力か。

imge29bb630zikazj.jpeg『ワンマンバンド』

やるな!ピクサー濃縮還元

ピクサーがiTunes上(Pixar Short Films)でショートムービーを公開してるの。どの作品も素晴らしいけど『ワンマンバンド』は特にやられちゃいました!

短編というのは本当に難しい・・・ピポ子もPODCASTを作っていていつも思う事だけど、時間とは常に戦い!内容の組み立て方、テーマは勿論重要だけど、見せ方聴かせ方がひとつがずれればお客様に「長い」と思わせてしまうから。その点この作品は短い時間にギュッと色々な要素が凝縮され、それをテンポ良く組み立ててるから脱帽だわ。

ストーリーはお願い事をしようと1枚のコインを持って広場にやってきた少女が二人のストリートミュージシャンに出会うの。ミュージシャン達は競争心を駆り立てられ演奏合戦が繰り広げられるのだけど、最終的に少女の取った行動は・・・?という内容なのだけど、結末に大感心!

映像の美しさは然る事ながら、このブラックさ!

音楽と映像のみ、セリフなしの状態でこの表現力!・・・参りました。これからPODCASTを作る上で本当に参考になったわ。いかに自分の表現したい事を新鮮なうちにお客様においしく召し上がって頂くか・・・作り手としては勝負ね!包丁磨いで出直して参りやす。

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