Movie2008_07

img14116058zik4zj.jpeg「プリシラ」

砂漠に咲く華たち、人生はショウの如く・・・

1994年ドラッグ・クイーン・ムービーの名作と称される「プリシラ」

今迄見た作品の中で最もドラッグ・クイーンが自然に描かれていたから、実際のクイーンはきっとこんな人達なのだろうと想像が出来たわ。

性転換者のバーナデット、結婚経験のあるミッチ、若くてやんちゃなフェリシアの3人は、ミッチの元妻のいるリゾート地でショウを行なう為、シドニーから"プリシラ"号と名付けたバスに乗り長旅に出たの。道中先住民との出会いや車の故障を経験し、ひょんな事から修理屋のボブも同乗してようやく目的地へ。

そこで生まれて初めて会う自分の息子がいる事を知るミッチ・・・彼はドラッグ・クイーンである事を息子に隠そうし、バーナデットは恋を・・・というお話なのよ。

ひとつ気になったのは、ショウのシーンではクイーン達は音楽を口パクで合わせ衣装やダンスや演出で盛り上げてたの! これまで見た作品では皆本人が歌っていたのだけど、今回は"見せる"事に徹底してたわ。確かに華やかな女性の姿なのに男声で歌われたら冷めちゃうわよね・・・そう考えると今回の見せ方が一番自然かもしれない。

主役の女王3人の演技は素晴らしかったのは言うまでもないけど、特にバーナデットには目を奪われたわ。"彼女"は年老いてるけど、クイーンとして誇りを持って生きているのよ。

砂漠で死にそうになっても口紅を直すし、差し入れられた薔薇の香りを楽しみ、髪も服もTPOに応じて美しく整えて・・・真のレディなのよ!恋に落ちた時の表情は「参りました!」ミッチは父親として息子に接する事が子供への愛情と思い努力するのだけど、賢い息子は父の全てを受け入れているシーンは心が暖かくなったわ。

とにかく3人3様の個性やクイーンとしての考え方がはっきり表現されている事が、見る側にリアルな温度として伝わってきた要因なのかも。その結果この作品が"元祖"であるという事は間違いない!おでんのように色々な味を楽しめて、最後は心がホカホカしてくる・・・元祖"おでんロードムービー"と名付けさせて頂こう!!

img493f65dfzik4zj.jpeg「レミーのおいしいレストラン」

ピクサーに舌鼓、愛情は香りから・・・

ピクサーはどこまでやっちゃうんだろう!?と期待に胸を膨らまして見た「レミーのおいしいレストラン」

進化し続ける映像は、最早タブーの域まで行ったのではないかしら・・・。人物の細やかな表情や細かいディテールは毎度の事ながら素晴らしいけど、特に驚かされたのは食べ物の質感!

とろっとした液体の粘着感、茹でる前のパスタの固さ、卵焼きのふんわり感・・・視覚的な表現だけで、味覚や食感をこれほどまでに表せてしまうというのはお見事と言うしかないわ!!ストーリーは、料理好きなネズミのレミーは仲間とはぐれ、偶然にも尊敬していた料理人の店に辿り着くの。そこでのろまな見習いシェフのリングイニと出会い、彼の料理の手伝いをする事に。

レミーの卓越した料理のセンスのお陰で店は予約で一杯、リングイニは時の人となるけど、彼に疑いを持つ料理長は真実を暴こうと執拗に追ってくるし、店の存続の運命を握る辛口評論家はやってくるし、従業員は辞めて行くし・・・窮地に立たされた2人の運命は!?・・・というスピーディな展開なのだけど、小気味よいテンポで進行していくからどのシーンも見ごたえ十分。

端役の人物がスパイス的な役割を果たし、遊び心も満載。きっと"切れがいい"のはこんな風に細部にまで気が行き届いているからなのかもしれない。レミーはネズミであるけど、只残飯を食べればいいという父や他のネズミとは違い、食について独自の哲学が有るの。そんな彼の作った「ラタトゥーユ」が辛口評論家の冷たく閉ざされた心を、彼の信念が父親の心を動かしたのよ。

今回も信念、親子愛、偏見と様々なテーマが盛り込まれていたけど、ふと昔ピポママが言っていた一言を思い出したわ。「料理とは、口から入ってくる愛情である」ううむ、なるほどその通りかも・・そう考えるとオリジナルタイトルの「Ratatouille」のままで良いと思うのよね!ラタトゥー・・・ラット・・・あ、なるほど!ニクイね!!

img6bf6c0c9zikezj.jpeg「キンキーブーツ」

ヒールに踏まれる偏見、父が望んだ息子たち

以前、街の映画館で「キンキーブーツ」という作品のポスターを見かけてずっと気になっていたの。赤い蛇柄のロングブーツに、そこから顔を覗かせる人々・・・一体どんな内容なのかしらってね。

ちょっとエロティックでコミカルな感じなのかと想像してたけど、実際見てみるとその暖かみ溢れるお話に感動したわ!

イギリスの田舎町にある老舗の紳士靴メーカー「プライス社」・・・婚約者と共にイギリスに移住しようと思っていた跡取り息子は、父の死により急きょ靴工場を継ぐ事になったの。だけど経営状態は火の車・・・弱気な息子は職人達をリストラするしか方法を見いだせなかったけど、女性職人に「新たな市場を開拓するべき」と提案され、工場再起に向け進み出すの。

そんな時、彼は偶然知り合いになったカリスマDragQueenのローラが足に合わない靴に悩んでいる事を知り、特殊なニッチ市場を狙ったDragQueen専用キンキブーツを作る事が一発逆転の奇跡をもたらすと確信。最初は呆れ顔の職人も息子とローラの熱意にほだされ、やがて一丸となってミラノのコレクションを目指すことに。

とにかく見どころはローラ!

どこからどう見てもいかつい体型の男性なのに、ちょっとした仕草や歩き方が実に女性として完璧。波止場で軽くステップを踏む彼女は本当にキュートで女性にしかみえないし、息子と食事をするシーンでの、嬉しさに目を輝かせたかと思えば意気消沈し乙女のように涙を流す姿に思わずキュンとしちゃった。

跡取り息子もローラも共に父親という大きな存在の前で本当の自分を押し殺して生きてきたけど、息子は命がけで工場を守り、ローラはカリスマDragQueenとして君臨することでようやくその呪縛から解き放たれ自分の道を見つけるの。目玉である彼女!?達のライブショウはかなり見ごたえがあるけど、このお話のモデルでもある実在の工場で撮影された靴製作の過程もなかなか興味深いわ・・・。

親子愛、自立、挑戦、偏見、友情、愛・・・色んな要素がふんだんに取り込まれていて、力を入れないで楽しめる作品よ!今日からアナタも心をメイクアップ!!

Movie Review

2008 7
プリシラ
レミーのおいしいレストラン
キンキーブーツ

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