Book2007_12

imgad55bc32zikfzj.jpeg藤子不二雄
「笑ウせぇるすまん」

ブラック×ブラック

藤子不二雄の作品といえば、皆さん何を思い浮かべる?ドラえもん?魔太郎?・・・それも捨て難いけど、ピポ子は「笑ウせぇるすまん」!

最近原作本をやけに読みたくなって愛蔵版を探しに本屋へ行こうと思っていた矢先、何とコンビニ限定特別号を発見。500円で20編も入ってるからお買い得〜。「笑ウせぇるすまん」は昔アニメ放映されていた時、そのセンスの良さとキャスティングの完璧さに思わず釘付けになって見入ったのを今でも覚えてるわ。

セールスマンの喪黒福造が、人々の疲れた心の隙間を埋め報酬としてお客の満足を受け取るというストーリーなのだけど、実に主人公のルックスが不気味で素晴らしいわ。登場するのは可愛らしい藤子不二雄キャラだけど人間の心理を見事に突いた内容ばかりなので、絵に違和感がありつつもテーマで感心させられちゃうの!

ピポ子の歌の世界観に酷似してる所があるから、時を超えてアンテナが伸びちゃったんだわ、きっと。「喪黒はファウストに出てくる悪魔『メフィストフェレス』をモデルにした」という作者の記述があったのを見てピポ子大納得!

喪黒は、善良な小市民の心の奥に潜む欲望を誘い出し最後は破滅させる・・・本来ブラックユーモアとは自虐的なものであるから、視聴者はその人間の愚かさや滑稽さを自分に投影して見ているのかもしれないわね。ピポ子ももしかしたらこれから自虐的な作品がたくさん出来てきたりして・・・それはそれで面白そう。ウッホッホッホッホ・・・(喪黒福造風)

imgd0bde38azik5zj.jpeg三島由紀夫
「愛の渇き」

赤い糸は空回り

探していた本が見つかったと思い、買ってすぐさま読み始めたら既に持っている作品だった・・・なんていう経験はないかしら?

ピポ子はつい最近あったわ。

久々に深夜の本屋で大好きな"三島由紀夫"を物色していたら、前から探していた「愛の渇き」を発見し迷わずレジに一直線!

その後わくわくしながら電車で読み始めると・・・ん?何だか読んだ事の有る冒頭部分に嫌な予感〜・・・はい、持っておりました。

凄くショックだったわ!

損したという気持ちと、物忘れが激しくなったのではという不安がミックスされてね。

この作品は不治の病で倒れた夫を、歓喜とでもいうべき熱意で看病した妻が夫の死後舅の情人となり、その家に勤める少年を愛して殺すという、なんとも一見自虐的でありながら自己中心的な愛を貫く女の生き様が描かれてるの。

三島作品を読んでいていつも感じるのは、女性に対する憎しみなのよね。当たり前に幸せな女性がメインキャストに置かれる事はないし、いつも心のどこかに黒く渦巻いた闇をしょっている人がほとんどのような気がするわ。そんな人間臭さが好きなんだけど・・・。

本文で、妻の事を親戚夫婦が「癖になった流産みたいに、癖になった失恋というものがあるんだよ。神経組織の一部に癖がついて、恋愛するたびに失恋する羽目になるんだ。」と言っている場面があるのだけど、まさに彼女の状況をうまく言い得ているわ。

愛されたい・・・でも愛した人に心からの愛を得られない・・・とても苦しい事よね.でもそれには"原因"というものがあるのだけど気付くまでが難しい。

異性運が無いと思ってる皆さん、この本を読んでちょっぴり己を振り返るのも良いかもしれないわ!

ピポ子がこの本と再び出会ったのももしや・・・その啓示だったのか・・・!?

080116.jpg藤子不二雄
「魔太郎が来る!」

阿修羅の如き二面性

藤子不二雄氏の「笑ウせぇるすまん」を紹介させてもらったけど、更に凄い作品があるの!

そ・れ・は・・・「魔太郎が来る!」

もやしっ子の魔太郎という少年が様々ないじめに遭い、特殊な能力を使い報復するというストーリーなのだけど、その背景にあるものは人間界同様、悪魔社会の権力争い。そして見事に人間の愚かさと虚しさを描いているわ。

一見勧善懲悪に見える物語だけど、ちょっと意味合いが違うのよね。魔太郎は言いたい事も満足に言えずなすがままにされてる時の方が多いから、いじめっ子のサディステックさを増幅させているのは当然だし、そんな彼が夜になると薔薇のシャツに黒マントで現れ復讐を遂げるなんて滑稽以外の何ものでもない。

悪く言えば「卑怯」ね!

でもそんなマイナーなヒーローだからこそ彼は支持されてるのかも・・・。ある意味自分に正直に生きているのかもしれないわ。いじめはいじめられる方にも原因があるとよく言われるけど、言葉の受け止め方が人それぞれ違うから傷つく度合いも大分異なるわよね。

ちょっとした一言が取り返しの出来ない出来事を招いたりする場合もあるし・・・。生きていく上での"バランス"って本当に難しい。この漫画を読むと毎回後味が悪いけど、"人としてどうあるべきなのか"という事が客観的に計れるリトマス試験紙といえるわ。さあ、果たしてあなたの魔太郎度はどのくらいかしら?

img37192383zik3zj.jpeg王家の紋章

イライラとドキドキの連続

超大作漫画って沢山あるけど、ピポ子のお気に入りは「王家の紋章」!

一体何十年かかるんだというくらい長編も長編。今現在も連載が続いているから、作者の根気と集中力には脱帽ね。ピポ子はPODCASTを13本作るだけでもヒーヒーだというのに・・・凄いわ!

内容はアメリカの女学生が、ミイラを掘り起こした呪いにより古代エジプトへタイムスリップしてしまうというお話なの。そこで彼女は若きエジプト王に恋をして二人は結ばれるものの、金髪で可愛らしく優しい女学生を手に入れようと各国の王や刺客がわんさかわんさかやって来るのよ。

お話自体は超超ラブストーリーでイライラするけど、一番の見どころは凄く大胆な構図!一般的な漫画は1枚に4〜5くらいのコマ割りがあるけど、この作品は掟破りの連続でコマ割り無しなんて言うことがざらなの!

大胆に描く事で、登場するキャラの心情が前にガーンと出てきて面白いわ。たまに「これ、紙の無駄遣いじゃないかなあ」と思う部分もあるけど、とても斬新な手法よ。それに女性が描く作品だけあって、少年王と女学生を取り巻く人々の嫉妬模様の描写が単純だけど見事に惹きつけられちゃうの!

内容というより、この人間描写でノックアウトされてるファンも多いんじゃないかしら・・・。とても可愛らしい昔ながらの少女漫画的な絵だけど、どろどろとした"女の嫌な部分"を引きずり出されるこの名作・・・子供の時と大人になった今読むのとでは、感じるものが微妙に違うはずよ。是非一読あれ!

Book Review

2007 12
藤子不二雄 / 笑ウせぇるすまん
三島由紀夫 / 愛の渇き
藤子不二雄 / 魔太郎が来る!
王家の紋章 / シリーズ

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