Music2008_08

imge7994902zikazj.jpegデヴィッド・ギルモア

Remember The Night Live At Royal Albert Hall (DVD)

最近リリースされたLIVE-DVDで間違いなくNo.1なのがこれ、デヴィッド・ギルモア「Remember The Night Live At Royal Albert Hall」。邦題がとにかく良い!!"覇響(はきょう)"・・・彼の音の世界を見事言い得てるわ。

ギルモアと言えば誰もが知ってるピンク・フロイドのメンバー。黒いシャツイン黒いパンツ姿という実にシンプルな出で立ちでは有るけど、その存在感たるや凄いものが有るわ。

ショー全体は毎度の事ながら、彼のスタイル同様一切の無駄が無く、曲の世界にゆっくり深く引き込まれていってしまう。今でも印象に強く残っているのは、上から下に真っ直ぐ延びた一筋の光の上部が20度位に開きそこに白煙がゆらゆらと立ち上るという、シンプルながら強烈なライティングなの。それをを背にして演奏するギルモアの姿はまさに"空を割った男"といった風情!

こんなに印象深いライティングを背負う事の出来るアーティストは世界にどれだけいるかしらね・・・やられちゃいました。ライブのどの部分から見ても口をあんぐりとしてしまうけど、第2部最初のクロスビー&ナッシュが加わった名曲"クレイジー・ダイヤモンド"では、saxのディック・バリーが、バリトンとテナーの持ち替えウルトラ技と情熱的なプレイで全てをかっさらったわ!

そして次曲は「デブでよろよろの太陽」・・・70年に発表され71年のツアー迄しか演奏されなかったというレア曲なの。太って年老いた太陽が沈み自然や子供たちの声を心地よく感じていると、不思議な時間から来る銀の音が僕に歌う・・・といった内容なんだけどギルモアがとても優しく歌うので、何とも切ない気分になったわ。

人は老い、静かに死に向かっているけど、それは日常の穏やかな暮らしの中に存在する事であり自然な事。銀の音は死を象徴してるけど、歌いかけてくれるので決して恐れる事は無いんだよと・・・そんな風に解釈出来たの。ピンク・フロイドの楽曲は、その深い詞の世界観とドロッとしていながらさっぱりと聴かせるメロディーの美しさに驚かされるのよね。しかも無駄なものを一切排除して、楽曲の世界を観客に伝える事だけに集中する・・・これぞアーティスト!

ギルモアを見ていて思ったのは、全てに迷いが無いという事。だからこそこんな作品を生み出し、今なお前進し続けているんでしょうね。ピポ子も今日からシャツインで、迷いを捨てて生きていこう!!

imgdb940ad6zik8zj.jpegフィリップ・ボア&ザ・ヴードゥークラブ

ヘアー

「フィリップ・ボア&ザ・ヴードゥークラブ」・・・アーティスト名を聞くと何とも恐ろしいイメージが湧くけど、アルバムのジャケットを見るとそんな印象は皆無でむしろお洒落。

ピポ子が彼らのアルバム、"ヘアー"を聞いたのは今から10年以上も前の事よ。初めて彼らの音に触れた時はそのメロディラインや曲作りの奇抜さに驚ろかされたわ。ボーカルの声質があまり好きでは無かったけど、そんな事を忘れさせるくらい次から次へと様変わりする楽曲に圧倒されてしまうの。

歌詞の内容も実にユニークで、シングルカットにもなった2曲目の『コンテナ・ラブ』は40年間幸せだった男が妻を亡くし悲しい生活を送っていたけど、友人と訪れた酒場でボトルと恋に落ちやがてナイトクラブに入り浸る。そのうちナイトクラブの清掃の仕事をしながら今度はクラブの裏の物置に恋をする・・・という内容なのよ。

人間がものに恋をするなんて遠藤徹の「カデンツァ」の世界でもあるまいに・・・と思うけど、悲しみのどん底に突き落とされた人間は何かにすがり生きていきたいと思うでしょうね。お酒のコントロールや誰の目も気にしなくて良い物置での安らぎ、きっと中年の男は無機物に"恋する"事によって救われたかったのかも・・・生きる事は時に残酷だけど、それを乗越える為に人は救いを求めている、そんなテーマが見えてきたの。

曲自体もは民族的なアプローチが強いものから、曲中で急にパンキッシュになったりして色んな味を楽しめるわ。このアルバムはどの作品の歌詞の世界観も曲作りも一見突飛なように感じるけど実に深い!今聞いても古さは微塵も無く、彼らの尽きる事の無いアイディアにやられっ放しよ。

数年前ピポ子は曲作りで悩んでいた時、雑誌"広告批評"で偶然このアルバムのジャケットが紹介されてるのを見つけ「ああ、また聞きたいな・・・」と思ったのだけど、自分が迷う時に限って必ずこのアルバムが出てくるのよね・・・やはりこれもヴードゥーの力なのだろうか・・・恐ろしい。不思議な世界に興味のある方、煮詰まった方にはオススメ!!異次元へ誘われる事間違いなし。

Music Review

2008 8
デヴィッド・ギルモア / Remember The Night Live At Royal Albert Hall
フィリップ・ボア&ザ・ヴードゥークラブ / ヘアー

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