Movie2008_11

081129.jpg「ブレードランナー最終版」

新古典未来映画

SF映画の金字塔「ブレードランナー最終版」!!こんな作品が1982年に公開されていたなんて、恐ろしいったらありゃしない。しかし本作で描かれている近未来世界のビジュアルは、ピポ子が今迄見てきたアニメ作品や絵画、映画等で登場したものにそっくり!いかにこの作品のイメージが強烈に様々なクリエーターの脳に焼き付いてしまったかが良く分かるわね。

未来というには物凄く退廃的で、クリーンな物が一切無し、人間臭さが匂い立つような現実味がたまらないわ。ヴァンゲリスの紡ぎ出す音が更に物語を奥深いものにしていて鳥肌ものよ!物語は近未来の地球・・・宇宙開拓前線ではレプリカントと呼ばれる人造人間が奴隷として過酷な業務を行っていたの。

彼らは人間と替わらぬ風貌を持ち感情を持たなかったけど、やがて感情が芽生え人間に反旗を翻す者も現われたわ。反乱を起こすレプリカントを処刑する為、ブレードランナーという専任の捜査官が行動を開始したの。殺人を犯した最新型レプリカント男女6人を追うブレードランナーのデッカード。しかし彼はそのうちの1人、自分がレプリカントである事を知らなかった美しい女性レイチェルと恋に落ちてしまう。やがて激しい戦いの末、レプリカント達の真の目的を知ったデッカードは虚無感を抱き、レイチェルとの未来に賭ける・・・のか?

というストーリーなんだけど、監督のリドリー・スコットは劇場版のラストの2人の逃避行シーンに納得が行かず、1992年の再編集された最終版ではラストが別の解釈が出来る終わり方になってるの。ピポ子もこちらの結末に一票!とにかくすべてが素晴らしすぎるけど、レプリカントのリーダーを演じたルトガー・ハウアーは美しさ、狂気、悲哀を見事に表現しているわ!獣のように叫び、自らの手に痛みを与えるシーンや窓からデッカートの姿を見つけてひょいと頭を引っ込めて屋内に戻るシーンは驚異としか言いようが無い。

レイチェルや他の女性レプリカントのヘアメイクやコスチュームも独特で、劇中でダリル・ハンナが人形をモチーフにしたと思われる伝説のエアスプレーのアイメイクは、今見ても斬新で美しいわ。期限がある事で輝く生命・・・存在することに執着を覚えた時から、子供のようにがむしゃらになる人間の浅ましさ、切なさ、そんなものがこの無機質な世界で堪能出来た気がする。あぁ、もう書き切れないくらい魅力的だぁ!

081122.jpg「ザ・エージェント」

愛するという事

トム・クルーズ贔屓ではないけど、1996年に公開された「ザ・エージェント」に好感を持ったわ。実は今日から公開の「トロピック・サンダー」に重要なポジションでカメオ出演していて、この「ザ・エージェント」を見ておくとを強くオススメするわ。きっと100倍は笑えるから・・・詳細は話せないけどね!

トムが演じているのは全米一のエージェント会社に勤める有能エージェントなの。やり手である彼は、高価な年棒と引き換えに選手の家族の気持ちを犠牲にしてきた事に気付き、会社に対して提案書を提出。理想に満ちた企画書は同僚の賛同を得たと思ったのも束の間、彼は会社をクビに。

5歳の子供を抱えた経理のシングルマザーだけが彼に付いて会社を辞め、大勢いたクライアントも同僚にさらわれ只一人落ち目のフットボール選手だけが残る始末。全てを失い一から立ち上がろうとする彼はフットボール選手とシングルマザーから愛する事の力強さと素晴らしさを学ぶ。

とにかく前半は、あっという間にトムが契約の鬼であった状態から自責の念にかられる部分までがテンポ良く進み、後半はじっくりと彼が人を愛する事に苦悩しつつ一生懸命になる部分が描かれていて凄く良かったわ。日本ではあまりスポットの当たらないエージェントという仕事の滑稽な部分もリアルに描かれていているから面白いの。

シングルマザーが、トムを愛しながらも子供がいる事で引け目を感じ自分の思いをセーブしたり、いつも冗談ばかり言っている選手が命がけで家族の為に戦ったり、相手を思うが故に自分を犠牲にするという愛情が伝わって人間の強さを改めて思い知らされた気がする。

仕事は結果を出してなんぼ、青臭い事ばかり言っていては食べてはいけない・・・確かにその通りだけど、青臭い部分も持ち合わせていないと心がすり減って大事なものを見落としてしまうわ。改めて今の自分の心の在り方を考えさせられる作品かも・・・。

081115.jpg「チャーリー」

笑の原点

ロバート・ダウニー・Jr主演1992年作品「チャーリー」を見た後、背筋が正される思いがしたわ。自分が限られた時間内でどれほどの作品が残せるのだろうか・・・ついそんな事を考えちゃった。

物語はチャップリンが貧しさから這い上がり、無声映画の王に君臨し現在の映画界の基盤を作り上げていく一方、様々な女性との出会い、世界恐慌やファシズムに立ち向かいながら作品を作り続けていくという自伝的な内容なの。喜劇王がどれほどの試練と苦悩を抱えて生きてきたかが良く描かれてるわ。

今とは比べ物にならないくらい厳しい時代に、よくぞこれほど自分の信念を貫いたものだと感心するばかり・・・でもこの信念が貫いたからこそ極みに到達できたのね。意外にもチャップリンが若い女性に弱いという事を知ったのだけど、その背景には25歳という若さで亡くなった、彼が初めて愛したダンサーの少女への思いが残っているからみたい・・・そういう意味合いでは彼は一途な男性と言えるかも。

ピポ子が初めてチャップリン映画を見たのは「モダンタイムス」。学校の授業内だったけど、見終わった後何とも言えない新鮮さと切なさが込み上げてきたのを覚えているわ。滑稽でリズミカルなチャップリンの表情や動きは今見ても斬新で、その表現は他に類を見ないのよね。ドリフを始め様々な人達が彼をオマージュしているけど、笑いのエンタテイメントの原点はここにあり!なのだわ。

しかし、このロバート・ダウニーという役者はやはり只者でない!今作で彼は著名すぎるほど著名なチャップリンを演じているのだけど、まるで本人を見ているように違和感を全く感じさせないの。後半、老年のチャップリンが自分の作品を見るシーンがあるのだけど、その表情といったら・・・目で表現するってこういう事なのだと感動よ!!

新しいものを作り上げるというのは半端な事ではない。これだけの素晴らしい作品を作っても、己を"二流"と言い放つチャップリンの言葉には妥協や諦めは存在しないの。気合い頂きました、押忍!

081111.jpg「マンマ・ミーア」

ロングランの秘訣

ミュージカルの定番「マンマ・ミーア」が最近メリル・ストリープ主演で映画化されたけど、その人気はうなぎ登りだそうよ。

10月現在、全世界興行収入5億4000万ドルを稼ぐ大ヒットで、ノルウェーだけでも1560万ドル稼ぎ出しているというから凄い事だわ。

しかも更に驚くべき事にその売上のうち2600ドルは、トロンヘイム在住の31歳の男性一人が貢献したんですって!この男性は本作の大ファンで計162回も観賞したというから、暗唱が出来るくらいなんじゃないかしらね〜。

今迄彼が最も足繁く劇場に通った作品は「シュレック2」の160回だそうなので記録は塗り替えられたわ。しかしよくぞここまで・・・DVD発売を待てないほどこの作品を愛しているのね。「マンマ・ミーア」が生活の一部になってるといっても過言ではないわ。

ロングラン作品というのはこうしたファンに支えられ息づいているのね・・・日本でも密かにこんなファンが存在しているのかもしれない。作る側にとっても、次の世代に楽しんでもらえる程息の長い作品を作る事が出来ればこんなに嬉しい事はないもの。さ、ピポ子もひ孫世代にまで語り継がれる作品を作らなくっちゃ!

081105.jpeg「エンパイアレコード」

愛すべき仲間と・・・

若き日のリブ・タイラー出演の1995年映画「エンパイアレコード」。舞台が片田舎のレコード店というユニークな設定で、そこで働く店員達の人間模様を描いた作品なの。

雇われ店長と従業員達はとても良い関係で、何よりこのエンパイアレコードを愛している。でもオーナーの指示で店が大手チェーン店に売却される事になり、全員がそれを阻止しようと一丸となるのよ。

売却の件を知るまで店員達はそれぞれの悩みに翻弄されていて、リブ演じる容姿端麗の女の子は、新曲のプロモーションで店にやってくる70年代元アイドルに自分の処女を捧げようと必死だし、そんな彼女に告白をしようとする画家志望の男の子は緊張しっぱなし、出勤するなりトイレで髪を丸坊主にする女の子はいるわ、店の売却を阻止しようと売上金を元手にカジノで増やそうとして失敗した男の子・・・と実に皆が皆己の思うまま一直線に突き進んでいる姿が良い感じ。

でもエンパイア・レコードの営業も実に個性的で、万引きを発見した時には実況中継を場内アナウンスで行ったり、店内中爆音で音楽をかけお客さんを踊らせたりするなど本当に楽しそうなの。雇われ店長は店の奥でストレス発散にドラムを叩くし、スキンヘッドガールは試聴機の個別ボックスで所得税の計算をする・・・

全てが自由奔放に見えるけど、自分たちが楽しんで仕事をする事によってお客さんも楽しめる店作りになっているという事なのね。日本だと、自分の勤務先が買収されたら諦めて黙々と勤めるか辞めるかという選択肢になりそうだけど、全員の"自分たちで築いてきた職場を守る"という考え方には、プライドを持って仕事をしているという強い意志が感じられるわ。

仕事もプライベートもラッキーもアンラッキーも、すべて含めて楽しまないといけない!見終わった後は、何とも言えない清々しさが残ったの。こんなレコード店が日本にあったら面白いだろうな・・・無理か。ピピッ。

Movie Review

2008 11
ブレードランナー最終版
ザ・エージェント
チャーリー
マンマ・ミーア
エンパイアレコード

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